京都の生活 第150回 庭際の菖蒲 (2013.6..11)

『いずれあやめ(菖蒲)か かきつばた(杜若)』という言葉があるが、これらはまことにややこしい。『広辞苑』で調べると次の記述がある、「菖蒲」は古くはあやめと呼んだが別種のサトイモ科の植物で、黄色い花を咲かせる。「あやめ」はアヤメ科の多年草でやや乾燥した草原に群生し、紫または白い花を咲かせる。現在咲いている「ハナショウブ」はアヤメ科でノハナショウブを原種とする栽培種。紫、桃色、白の豪華な花を咲かせる。

さらには杜若、燕子花と書いて日本では「かきつばた」と読ませるようであるが、漢語ではそれぞれヤブミョウガと蔓性の草のことでアヤメや菖蒲とは異種の植物である。

書いている本人も混乱して何が何だかわからなくなってくるが、我庭にこの間まで咲いていたのは確かに菖蒲であることを確認したので、この稿では「菖蒲」に焦点を絞ろう。

我家の裏庭は低い山に続いていて、水が湧き出るのを利用して池が掘られている。大雨でも降らないと満水になることはないが、普段は少し湿っていて菖蒲が群生している。

 しかしこの3年ほど、裏山を経由して侵入する鹿が春先に若い芽を食べつくしてしまうので、全く花が咲かなくなってしまっていた。

 他にもツツジなどの花芽も食べられてしまうので、裏庭に網をはりめぐらせて侵入を防ぐことにした。

 鹿はしつこく網を食い破ったりして侵入を試みていたが、こちらも負けじと補修を続けるのでようやく諦めてくれたようである。おかげで今年は菖蒲が見事に黄色の花を咲かせて二週間くらい楽しむことができた。

新緑の季節を迎えて、せっかくきれいに咲いてくれたので、詩に詠んでみた。後半では葉を槍に、花を蝶に見立てて対句に仕立てみた。「蕭然」とは静かでものさびしいさま。「裊裊」とは風にゆらゆらするさま、「翩翩」とはひらひらするさまをいう。

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